ウルトラマンメビウス & ウルトラ兄弟

昭和シリーズの世代向けと言う印象の強い作品ではあるものの、平成スタッフのカラーが前面に出た作品でもあった。記念碑としてはふさわしい作り方だと思う。
冒頭の月面で四兄弟がUキラーザウルスと対峙するシーンで、何故か号泣しそうになるのを堪えるので精一杯だった。再放送やレンタルでシリーズはよく見ていたし、ダビングした「ウルトラマンZOFFY」や「ウルトラマン物語」も飽きるほど見返していたが、僕はリアルタイムの世代ではない。それでも、オリジナルキャストの声で喋る四兄弟に心の琴線を強く弾かれたのには驚いた。
以下ネタバレあり。


この映画は冒頭から容赦無い板野サーカスが展開される。本来の対象年齢と大きくかけ離れた板野氏の対象年齢設定の上限ギリギリだった僕は時折ついていけなかったものの、そのスピード感は十分楽しめた。ともすれば後ろ向きになりがちな企画でここまで挑戦的な映像を表現できるのはNプロジェクトの残した財産だと言っていいと思う。
板野氏と言えば今回の映画の舞台である神戸空港にガンウインガーが着陸するシーンも必見。着陸脚の展開から、遠景で撮ったかのような陽炎の中、滑走路に弾かれて傾きながら減速する機体は他では見られないくらいにリアル。今回クライマックスには神戸が封鎖されるためCREW GUYSとガンフェニックスを活躍させられず、板野氏がその鬱憤をぶつけたらしい。


今回敵役となるのはザラブ、ガッツ、ナックル、テンペラー各星人の宇宙人連合とメビウスTVシリーズにも登場するヤプール。マックスで第一期の有名どころを使い切ってしまった感が無くもない。対するウルトラ兄弟の中でミライに絡むのは初代、セブン、ジャック、エースの四人で、ゾフィとタロウは助っ人として登場。ゾフィはともかく、ある意味で「兄弟」を完成させたタロウが絡まないのは残念。
本編では、怪獣災害で精神的外傷を負った少年ジングウジ・タカトを中心にドラマが展開する。タカトにガンウインガーを見せてあげようと媚びてしまう姿は、TV本編でバン・ヒロトの姿となってバン・テツロウを訪ね余計に傷つけてしまうシーンを彷彿とさせ、地球人として未熟なウルトラマンが周囲との関わりの中で成長していく姿そのものが、メビウスと言う作品の柱となっているのがわかる。


特撮格闘シーンは冒頭から本編を挟みつつほとんど休み無しで展開される。テンペラーは噛ませの扱いながら地上での格闘と空中戦と二つの戦闘を見せてくれるし、偽メビウスとなったザラブがタカトを絶望させたり、ガッツとナックルは合体光線を放ったりと、見所も多い。生き残ったナックルが滅ぼされて全てがヤプールの策略だったとわかった所でクライマックスのUキラーザウルス・ネオ戦へと突入する。
CG特撮はコスモスから顕著になったのだが、TV用のウルトラマン達はネクストと違い体のパーツが少なくテクスチャで表現されているため、モデルの荒さがそのまま画面に出てしまっている。とは言え、アイスラッガーを振り回して触手と空中格闘するセブンや、溜ポーズのシルエットが妖しいタロウのストリウム光線を回り込みながら映す等、実写特撮では不可能な映像の迫力は荒さを補って余りある出来。


人質のジングウジ・アヤを救うためウルトラマン達は合体する。間一髪で爪から逃れるのかと思いきや爪ごと吹き飛ばされてしまった時は素直に驚いた。メビウスインフィニティの細いプロテクターの上に散りばめられた破片のような意匠は、レジェンドの白いラインに続く面白い試みだと思う。頭部のラインがガンメタルになっているのは隈取りと併せて赤ではどぎつすぎると言う配慮からか。
インフィニティと対峙したUキラーザウルス・ネオは体中の刺と言う刺をミサイルにして撃ち出す。超巨大な超獣を相手にどう決着を付けるのかと見ていたら最後の最後まで板野サーカスの大サービス。ただ、捕われのヒロインが救いの手を差し伸べるヒーローを目撃すると言う構図を際立たせるためにもう少しヒロインとして掘り下げて欲しかったとは思う。


スタッフロールでは本編に出演できなかった旧作出演者達の映像とパーティの様子が流れる。これはおじさん達へのプレゼントだろう。「ウルトラマンを全員本編に出して欲しい」と言う気持ちもあったのだが、それをやるとドラマが成り立たなくなってしまうだろうし、四兄弟の映画だと諦めていたら海外や平成のシリーズの映像もスタッフロールに組み込まれて嬉しかった。
長々と書いてしまったが、もっと語りたいぐらい色々詰まった映画だった。逆に、四兄弟かメビウスTVシリーズを見ていないと辛い部分もあるかも知れない。


ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟 超全集

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パンフレットが売り切れだったため愛蔵版のムックを購入。